パリで故郷を思い出す【コウゲン編30】
目次
パリで故郷を思い出す
パリで印象に残る出会い
僕が田舎のお寺から逃げ出して、とにかく遠くへ離れたいという思いで、これまで生きてきた感じがする。
そして今、そこからかなり遠いフランスのパリにいて、毎日忙しく走り回ったりして、満足して生活している。
地球の反対側の、全く違う環境にいるということもあって、普段はお寺のことも思い出すことはほとんどない。
しかしある日のこと、ひょんなことで故郷のこと、当然僕のお寺のことを思い出す出来事がパリであった。
日本の商社からの出張客があって、いつものように僕が応対することになり会いに行った。
名刺を交換してみると、その人の苗字は『箸尾(はしお)』という。
これは僕にとっては忘れられない字であった。
僕のお寺のあった所は、その頃は町村合併で町の名前も変わってしまったが、元は奈良県にある『箸尾町』という町に属する小村にあった。
この箸尾という名は、言い伝えでは昔『箸尾』という殿様の屋敷か、城があって、そのためにこの町は『箸尾』という名になったと言われていた。
ぼくがいた頃には堀があったりして、その跡が残っていた。
その町やその近くには『箸尾』という苗字の家はなかった。
それまで僕は『箸尾』という名の人に会ったことはなかった。
そんなことで僕は思わず、『箸尾』さんにあって、長い間忘れていた自分の故郷のことを思い出してしまった。
そしてその『箸尾』さんに、僕の故郷は元『箸尾町』であるということ、そこには『箸尾』という殿様がおられたと聞いている事などを話した。
「ひょっとしてあなたは『箸尾町』のこと、『箸尾』の殿様のことなどご存知ではないですか?」
と聞いてみた。
その方いわく
「私はその血筋のものです。今も会社で、冗談半分で”殿様“と言われたりします。」
と笑っておられた。
そして今は三重県の方に家はあるということだった。
お寺のことを思い出す
後になって、調べてみてわかったのは、箸尾の殿様は、明智光秀の本能寺の変(1582年)で、明智につくか秀吉につくかで、日和みを決め込んだ人物だった。
有名な筒井順慶(つついじゅんけい)の一統の重職にあって、筒井順慶の妹を妻にした家柄であったという。
ちなみに筒井順慶は秀吉から大和国を正式に賜(たまわ)り、のちに伊賀国(今の三重県)に封じられたという。
これは箸尾さんが三重県に住んでおられるというのと符合する。
箸尾さんは商社の繊維部門におられて、その関係でパリへ出張で来られたとのことだった。
必要なファッション情報など提供したりして別れたが、僕にとっては印象に残る出会いだった。
そんなことで久しく忘れていたお寺のこと、そのお寺で僕のわがままを許して、そのお寺を一人で留守番してくれているお袋のことも思い出した。
もうパリへ来て7年になる。
僕はまだまだパリにいたい。
プロフィール
名前はコウゲン。
田舎のお寺の長男に生まれ、坊主になりたくなかった僕は、とにかく遠くへ逃げたかった。
出来れば外国へ。
その夢が実現してパリに10年住んだ後、日本に帰国してジュエリーブランドを創業。
前回までのあらすじ
・ファッション資料を求めて、フランス移住【コウゲン編1】
https://imac-j.com/blog/france/1502/
・フランス移住後、ゼネストと仕事【コウゲン編2】
https://imac-j.com/blog/france/1506/
・パリでの初仕事~通訳事件【コウゲン編3】
https://imac-j.com/blog/france/1650/
・リヨンでの発見【コウゲン編4】
https://imac-j.com/blog/france/1768/
・パリに着いて1年後【コウゲン編5】
https://imac-j.com/blog/france/1773/
・リヨンとギニョール人形劇【コウゲン編6】
https://imac-j.com/blog/france/1812/
・パリの食生活【コウゲン編7】
https://imac-j.com/blog/france/1816/
・パリのファッションの変化【コウゲン編8】
https://imac-j.com/blog/france/1818/
・パリでファッションカメラマンになる【コウゲン編9】
https://imac-j.com/blog/france/1820/
・フランスから物申す~我が社の経営陣に問題あり【コウゲン編10】
https://imac-j.com/blog/france/1829/
・フランスから一時帰国【コウゲン編11】
https://imac-j.com/blog/france/1831/
・フランスから一時帰国、そして手に汗握る攻防戦【コウゲン編12】
https://imac-j.com/blog/france/1833/
・パリに帰りたい【コウゲン編13】
https://imac-j.com/blog/france/1835/
・ふたたびパリへ【コウゲン編14】
https://imac-j.com/blog/france/1838/
・パリで新しいスタート【コウゲン編15】
https://imac-j.com/blog/france/1840/
・パリでデザインアトリエ経営【コウゲン編16】
https://imac-j.com/blog/france/1863/
・パリのデザインアトリエで日本人デザイナーが活躍【コウゲン編17】
関連情報
主役になれるドレスアップジュエリー|imac(イマック)
imac(イマック)は、日本人デザイナーのオリジナルデザインによってヨーロッパの工房で制作されたコスチュームジュエリーをお届けしています。おしゃれ心を刺激するモードなきらめきに溢れたネックレス、イヤリング、ブローチ、ヘアアクセサリーなどのアクセサリーが品のあるかわいらしさとトレンド感を演出します。大人の女性に人気があり、プレゼントにもおすすめです。
会社名 | 株式会社イマックジュエリー |
---|---|
住所 |
〒107-0062 東京都港区南青山4-17-33 |
営業時間 | 10:00~17:00 |
代表者名 | 奥谷千賀子(オクヤ チカコ) |
info@imac-jewelry.com |