フランスメーカーの来日

 

 

VGメーカーはimacにとって大事な存在

imac（イマック）のCさんはフランス、オーストリア、イタリア、スペイン、香港、タイなどのメーカーともそれぞれ仕事をしている。
それと同時に、VGメーカーとは他のメーカーにはできないシリーズができるので、より緊密に仕事をするようになった。

リヨンの彼らの工房にも、僕らはよく行った。

 

そして、CさんがデザインするVGメーカーのコレクションはよく売れた。

 

そういうことで、VGメーカーはimacにとって大事な存在になった。

 

 

田舎者のVGメーカーが日本旅行に来る

ある時、VGメーカーから連絡が入り、安い航空券が手に入ったので日本へ行きたいという。

 

来るのはVGオーナー夫婦とVG夫人の友達の女性の3人という。
ついては、彼らは何もわからないので、ホテルも、滞在地も全てよろしく頼むといってきた。
3月の初めに、関西空港に着き、何日か滞在して、出発は東京成田からということらしい。

 

彼ら3人はずっとリヨンに住んで職人仕事をしている。
外国旅行をして楽しむというタイプではない。
今回の日本旅行でも、ホテルも滞在も、できるだけ安いもので結構とのことだ。

 

僕はCさんと相談しながら、彼らが関西空港に着いて成田から出発するまでの日程を、滞在するエリアを決めホテルも予約することから始めた。
約10日間、これはフランスの田舎者3人を連れた、フルアテンドということになりそうだ。

 

 

3月の日本は寒かった

彼らの到着する日、僕は関西空港に行った。
少し遅れてしまった。

 

空港の待合ロビーに行くと、見覚えのあるVGオーナー夫妻達が心細そうに座っていた。

 

関西ではこの時期、奈良のお水取りの時期で寒い日が続いていた。
彼らはこの季節、日本がこんなに寒いとは予想していなかったようだ。

 

彼らはこれからどこへ行くのか全く知らない。
僕まかせだ。

 

最初の予定は、まずここから近い奈良の田舎を見せる。
僕のお寺に行って食事をする。

 

その近くに法隆寺があり、その近くにある小さいホテルに泊まることになっている。
翌日は奈良へ行き春日神社を訪ねて、お水取りを見るというコースにしている。

 

法隆寺の近くにある僕のお寺へ行くには電車を乗り継いで行く。
吹きさらしのプラットフォームで待っている間が寒い。

 

彼らはこの時期、日本は春だと聞いてきたらしい。
冬着を持ってこなかったという。

 

ただ僕も、冬にコートを着る習慣がなく彼らと同じ条件だったので、彼らは僕に時々
「あなたは寒くないのか？」
と聞いた。

 

僕は
「慣れているから、何ともない」
と答えて、彼らを感心させた。

 

彼らは間に合わせの寒さ対策に、下着を一枚多く着たりいろいろ工夫をしたようだ。

 

 

ウォシュレットがよかった

僕のお寺に着いて、彼らは生まれて初めて日本の田舎のお寺なるものを見た。

あとでその感想を聞いたところ、何とトイレが良かったという。
「暖かい水が出てよかった。あんなの初めて」
という。

 

ウォシュレットのことだ。
僕は少しガッカリした。
お寺のことではなかった。

 

日本のウォシュレットは外国人には評判がいい。
しかし、フランスのパリでは水質の関係で詰まってしまうようで、うまくいかなかった経験がある。

 

お寺では少しは暖気を取り、人心地が着いたらしかった。
そこで出された日本の家庭料理ソノモノのようなものを食べて、法隆寺のそばのさびしいホテルに行き、彼らは日本での最初の夜を過ごした。

 

明日は、日本の古都奈良へ行くことにしている。

 

 

 

プロフィール

名前はコウゲン。
田舎のお寺の長男に生まれ、坊主になりたくなかった僕は、とにかく遠くへ逃げたかった。
出来れば外国へ。
その夢が実現してパリに10年住んだ後、日本に帰国してジュエリーブランドを創業。

帰国後に図らずも住職になってしまったものの、外国とのコンタクトは続く。