パリでの初仕事~通訳事件【コウゲン編3】

パリでの初仕事~通訳事件

 

打合せをする外国人

 

パリでの初仕事

1968年6月、初めてのパリで、仕事を始めるにあたって、まず困ったこと。
それは、商品として手に入れたいファッション関係の雑誌や本を買うために、大きく扱っている会社を調べ、その事務所の担当者とアポイントメントを取るということだった。
会社を調べ、その電話番号に電話でアポイントメントを取る必要がある。

 

フランス語通訳を雇う

とにかく、僕はフランス語は話せない。
英語も話せない。
この時ほど日本での英語教育の問題点を痛感した事はなかった。

 

一応日本では、英語は中学で3年、高校で3年、大学で4年と合計10年習ってきたにもかかわらず全く喋れないということだ。
それも学校での英語の成績はそれほど悪くはなかったのにも関わらず、だ。

 

いずれにしても僕にとっては早く仕事をしなければならない。
日本からの送金の問題はなんとかなるようになった。
日本の我々の会社も、難しい財政をなんとかして送金をしてきた。
ということは、彼らも僕がフランスで仕入れる商品を待っているということだ。

 

僕は通訳を雇うことにした。
高い通訳は雇えない。
日本大使館に行くと、アルバイトで安く通訳をする日本からの留学生の名簿があると教えてもらった。早速行ってパリでフランス語を勉強しているという1人の通訳を雇い、彼を連れてファッション関係の雑誌や本を発行している会社へ行った。
日本でも知られていた大きな本の会社だ。

 

通訳ができない新米通訳

担当者が出てきて、僕は通訳に僕が何のために来たかを伝えるように話した。
通訳を通じて話がスムーズに進むことになると思っていた。
が、ここで僕にとって驚くようなことが起こった。
僕の通訳は「Mu…….」といったなり、次の言葉が出て来ないのだ。
相手のいうフランス語にも答えられない。
これにはおどろいた。

 

相手の担当者もフランス語で話すことをあきらめて、僕に英語で話をして来た。
このフランス人のゆっくり話す英語は僕にも大体分かった。
僕は単語を並べるくらいの英語で答える。
何とかそれで行けることがお互いにわかった。

 

これからの仕事に何となく明るい気分

とにかく、こちらの欲しいファッション関係の雑誌や本のタイトルは僕には言うことはできる。
それを聞いて相手はそれらしいものを色々持ってくる。
商品を前にすると、全く問題なく話ができた。

お互い共通のテーマさえあれば理解し合えるという事がわかった。

 

その日は初めての仕事で、目的を果たすことが出来てほっとした。
何も出来ないで恐縮している新米通訳には、払うべきものは払った。

 

が、僕にとっては、このフランスでの初めての仕事で、通訳なしで仕事ができるという自信ができたのだ。
それは、これから始まるパリでの仕事にとって、非常に大きな出来事だった。

 

 

プロフィール

水彩風の男性写真
名前はコウゲン。
田舎のお寺の長男に生まれ、坊主になりたくなかった僕は、とにかく遠くへ逃げたかった。
出来れば外国へ。
その夢が実現してパリに10年住んだ後、日本に帰国してジュエリーブランドを創業。

 

 

前回までのあらすじ

・ファッション資料を求めて、フランス移住【コウゲン編1】

https://imac-j.com/blog/france/1502/

 

・フランス移住後、ゼネストと仕事【コウゲン編2】

https://imac-j.com/blog/france/1506/

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